早い=仕事ができる? 介護現場で問われる“ケアの質”と“センス”

1. 「あの人はすごいよ、早いもんね」――よく聞くフレーズ

介護の現場でよく耳にする言葉のひとつに、
「あの人は本当に仕事ができる。とにかく早い」
という評価があります。

排泄介助、食事介助、入浴介助――いわゆる“三大介護”を
テキパキとこなし、複数人を一気に対応できる。
見ていて頼もしく思えるし、チームとしても助かります。


2. でも、早さ=良い介護なのか?

ただ最近、ふと思うのです。
「早いこと」が本当に「良いこと」なのか?

ご利用者の様子にじっくり目を向ける時間はあるのか。
表情の変化、体調の違和感、「今日は少し元気がないな」
そんな“小さなサイン”を見逃してしまうことはないのか。

“早さ”と“丁寧さ”は、時に反比例するのではないかと思うこともあります。


3. 仕事が早い人に対する「すごい」の中身とは?

私自身も、早く的確に動ける人を「すごい」と思います。
ただ、その“すごさ”の中身をもっと分解してみると、
単なる「スピード」だけでなく、以下のような要素が含まれているはずです:

  • 状況判断が早い(誰が優先かを瞬時に見極めている)
  • 予測して準備している(無駄な動きをしない)
  • 周囲に声をかけながら動いている(連携がとれている)
  • ご利用者の反応をしっかり見ている(観察力がある)

つまり、「早い」だけがすごいのではなく、
その背景には技術・経験・気配りがある。
本当にすごい人は、そこを押さえている気がします。

4. 急ぐことが悪いのではない。だけど…

勘違いしてはいけないのは、
「早い=悪い」「丁寧=遅い」ではないということ。

ただ、介助が早くても「何を大事にしているか」が抜けてしまえば、
それはただの作業になります。

ご本人の表情に目を向けず、声かけもせず、
濡れたまま服を着せたり、冷たい食事をただ口に運ぶだけになっていたら――
それは“いいケア”とは言えません。


5. 自分にとっての「いいケア」を考える

介護の現場は本当に忙しく、理想通りにいかないことも多い。
でもだからこそ、**「私は何を大事にしたいか」**を
自分の中に持っていることが大切だと思うのです。

「早い」と言われるために動くのではなく、
「丁寧だった」と思ってもらえる仕事がしたい。

その積み重ねが、ご利用者の笑顔につながると信じています。

6.丁寧さには“時間”がかかる。けれど…

ここまで書いてきた“早い=すごい”という印象について、
もう一つ大事な視点があります。

それは、「早く見える人の中に、本当に手を抜いている人もいる」という現実です。

例えば、食後の臥床。

  • 丁寧に声かけしながら口腔ケアを行う職員。
  • 口腔ケアを飛ばして、そのままベッドへ誘導する職員。

スピードで見れば、後者が「早い」と評価されるかもしれません。
でも、それは**“丁寧”ではなく、“雑”であり、“手抜き”**なのです。


🛁入浴介助に見る「本当のメリハリ」

入浴介助もまた、技術とセンスが求められるケアのひとつです。

ご本人に恥ずかしい思いをさせないよう、着脱は素早くかつ丁寧に
でも、お湯に浸かる時間はゆっくり、穏やかに

つまり“時間をかけるべきところ”と“効率よく終えるところ”のメリハリが大切。
これはマニュアルでは学びきれない“センス”の部分だと感じています。


🌱「センス」は才能ではなく、積み重ねで磨ける

では、そのセンスは生まれ持ったものなのでしょうか?

私は、誰でも磨けるものだと思います。

  • ご本人の立場で想像する力
  • 他の職員から学ぶ素直さ
  • 一つひとつのケアに向き合う姿勢

これらを大切にすることで、**“人としてのケアの感覚”**は少しずつ育ちます。

ケアの早さだけを競うのではなく、「その人らしさ」や「尊厳」をどう守るかを一人ひとりが考えること。

それが、本当の意味で“できる人”への第一歩なのではないでしょうか。


目次

✅結びの一文(まとめ)

「早いだけ」ではなく、「丁寧で温かい」ケアを。
そしてその中に、“気配りとセンス”という光を忘れずに。

そんなケアを続ける人こそ、私は“本当にすごい”と思います。

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この記事を書いた人

介護福祉士「みや」
高校時代、福祉の授業がきっかけで介護の道へ。
短大卒業後、社会福祉法人へ入社し14年経験を積む。
転職サイトを通して初めての転職。
別の社会福祉法人で現在4年目。
既婚、息子が2人。
現場と人財、介護の未来を考えるブログを運営中。
趣味:ウイスキー、コーヒー、釣り、園芸、アウトドア。

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