ヒューマンエラーについて考えていたら、良い介護現場とは何かに行き着いた

介護現場では、さまざまなミスが起こります。

薬の確認を忘れてしまったり、記録が抜けてしまったり、利用者さんの変化を見落としてしまったり。

もちろん、事故につながる可能性があるミスについては、原因を振り返り、再発を防ぐ必要があります。

ただ、僕は「ヒューマンエラー」について考えているうちに、少し違うところにたどり着きました。

それは、

「ヒューマンエラーを減らすために良い職場を作る」のではなく、良い職場を作った結果として、ヒューマンエラーによる重大な事故も減っていくのではないか

ということです。

人間は、必ずミスをする

そもそも、人間が仕事をする以上、ミスを完全になくすことは難しいと思います。

「もっと気をつけよう」
「確認を徹底しよう」
「集中して仕事をしよう」

もちろん、それも必要です。

しかし、人間の集中力や判断力には限界があります。

介護現場では、目の前の業務だけに集中していればいいわけではありません。

利用者さんの様子を見ながら、ナースコールにも対応し、他の職員から声をかけられ、予定していた業務とは別のことが突然入ってくる。

そこに早番、遅番、夜勤といった不規則な勤務があります。

睡眠不足や疲労、体調不良、家庭での出来事など、職員自身が抱えているものもあります。

そう考えると、

「集中してください」と言われても、そもそも人間が集中し続けられる環境なのだろうか?

と思うことがあります。

だから僕は、ミスをゼロにすることよりも、

ミスが起きても重大な事故につながらないようにすること

が大切なのではないかと思っています。

「ミスをした人」だけを見るのではなく、その背景を見る

介護では、利用者さんの行動を見るとき、その背景を考えます。

生活歴、既往歴、身体状況、認知機能、環境など。

「なぜ、この人はこういう行動をするのだろう?」

と考えたうえで、その人に合った支援を考えます。

ところが、職員になるとどうでしょう。

「あの人はミスが多い」
「あの人は何かと問題を起こす」
「またあの人か」

そんなふうに、行動だけを見て判断してしまうことがあります。

もちろん、仕事である以上、本人の責任もあります。

自分の状態を把握し、必要なことを学び、ある程度の状態で仕事をすることは、社会人として必要なことです。

だから、「何をしても仕方がない」という話ではありません。

ただ、

その人がなぜそうなっているのかを考える余裕も必要なのではないか

と思います。

普段はしっかりしている人が、その日に限ってミスをすることもあります。

寝不足だったのかもしれない。

体調が悪かったのかもしれない。

家庭で何かあったのかもしれない。

仕事が重なりすぎていたのかもしれない。

そして、一度のミスではなく、何度か続いてしまうこともあります。

すると今度は、

「この人はミスが多い人」というバイアス

が生まれてしまう。

本当にその人自身に問題があるのか。

それとも、その人が置かれている環境に問題があるのか。

そこを考えることも必要だと思います。

自己覚知も大切

一方で、すべてを環境のせいにすることも違います。

僕は「自己覚知」がとても大切だと思っています。

「今日の自分は余裕がない」

「今日はイライラしている」

「いつもならできることが、今日は抜けている」

「今の自分は利用者さんへの対応に注意が必要かもしれない」

そんなふうに、自分自身の状態に気づくことです。

時には、

「今日の自分は、悪い自分が出ているな」

と気づくこともあるでしょう。

それに気づくことができれば、少し距離を置いたり、誰かに相談したり、助けてもらったりすることができます。

でも、余裕がなくなっていると、自分自身を振り返ることすら難しくなります。

だからこそ、職員自身に余裕があることが大切なのだと思います。

「助けて」と言える環境

ここで大切になるのが、心理的安全性です。

「困ったら誰かが助けてくれる」「相談できる人がいる」

そんな環境が当たり前になれば、職員は一人で抱え込まなくて済みます。

ただ、ここにも難しさがあります。

職場に「困ったら言ってね」という環境があったとしても、
誰もが簡単に「助けて」と言えるわけではありません。

「忙しそうだから言えない」

「迷惑をかけたくない」

「こんなこともできないと思われたくない」

そう考える人もいるでしょう。

だから、

「助けてと言える勇気」も必要です。

そして、それと同時に、

「助けて」と言えない人に気づく仲間も必要です。

「大丈夫?」と聞くだけではなく、

「今日は少し疲れてない?こっちはやっておくよ」

と声をかける。

そんな関係性があるだけでも、違うのではないでしょうか。

支え、支えられるためには知識と技術も必要

ただし、「支え合い」は気持ちだけではできません。

知識や技術も必要です。

同僚から「移乗が怖い」と相談されたとき、ただ「手伝うよ」と言うだけではなく、安全に行うための知識や技術が必要です。

認知症の方への対応でも、相手の状態を理解する知識がなければ、適切な支援につながりません。

だからこそ、研修などで学ぶことも大切です。

そして研修には、もう一つの意味があると思っています。

それは、外の世界とつながることです。

他の施設の職員と話すことで、

「そんな方法があるんだ」

「うちとは全然違うな」

「それなら自分たちの施設でもできるかもしれない」

と、自分たちの職場を客観的に見るきっかけになります。

知識を得るだけではなく、人とのつながりから刺激を受ける。

それも、職員を成長させる環境の一つだと思います。

支え合いと依存は違う

ここには難しい線引きがあります。

支え合いが「誰かがやってくれる」という依存になってはいけません。

だからこそ、

支えてもらうだけではなく、自分も支えられる人になる。

そのためには学ぶことや考えることも大切です。

知識や技術を身につける。

自分自身を振り返る。

そして、いつか自分が誰かを支える側になる。

そんな循環が理想だと思います。

すべての人が同じように変わるわけではありません。

組織には、どうしても仕事への意識や主体性に差が生まれます。

だからこそ、全員を同じ方向に動かそうとするよりも、まずは多くの職員が良い方向へ進める環境を作ることが大切ではないかと思います。

特に、職場の「どちらでもない層」が、良い方向にも悪い方向にも動き得るのだとしたら、その人たちがどちらへ向かうのかは、組織にとって大きな意味を持つと思います。

職員の環境を整えることは、利用者さんのため

ここまで考えて、僕は最初の「ヒューマンエラー」というテーマから、かなり離れたところまで来ました。

でも、実は離れはいないかもしれません。

職員が健康でいる。

心に余裕がある。

自分の状態に気づくことができる。

困ったときに「助けて」と言える。

周囲も異変に気づくことができる。

支え合うことが当たり前になる。

そして、支えるための知識や技術を身につける。

そんな環境があれば、一人の職員に負担が集中しにくくなります。

結果として、ミスが起きる可能性も下がる。

そして、ミスが起きたとしても、重大な事故になる前に誰かが気づける可能性が高くなる。

何より、職員が良い状態で働くことができれば、利用者さんへのケアにも良い影響が出るはずです。

だから僕は、

職員の環境を整えることは、利用者さんへのケアの質を高めることにつながる
そう考えています。

ヒューマンエラーを減らすために「良い職場」を作るのではない

ヒューマンエラーについて考えていましたが、
最後には「良い職場とは何か」という考えになりました。

人間には限界があります。

ミスを完全になくすこともできません。

だからこそ、

人間がミスをすることを前提に、それでも重大な事故につながりにくい環境を作る。

そして、そのためには業務の仕組みだけではなく、職員自身が健康で、安心して働ける環境が必要です。

支え、支えられる。

学び、成長する。

自分の状態に気づく。

必要なときには助けを求める。

そして、誰かの「助けて」に気づく。

そういう職場を作っていくことが、結果として利用者さんへのより良いケアにつながるのではないでしょうか。

ヒューマンエラーを減らすために「良い職場」を作るのではなく、良い職場を作った結果として、ヒューマンエラーによる重大な事故も減っていく。

そんな「良い職場」が増えていくといいですね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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この記事を書いた人

介護福祉士「miya」
福祉の授業がきっかけで介護の道へ
気づいたら19年
経験:特養・養護・通所・訪問
現在:特養
趣味:釣り、ウイスキー、コーヒー、園芸、アウトドア、ファッション

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