介護の現場に18年携わってきた中で、利用者の世代が少しずつ変化していると感じています。
僕がこの仕事を始めた頃は、戦争や戦後の混乱期を生き抜いた世代の方々が多く、どの方も深く感謝の気持ちをもって接してくれていました。
- 「ありがとう、助かるよ」
- 「男の人にこんなことさせて申し訳ない」
- 「もう十分生きたから、あとは任せるよ」
そんな言葉を、よく耳にしたものです。
こちらが何かをして差し上げると、「ありがたい」と涙を浮かべてくれる方もいました。
そこには、**命や人の支えに対する“感謝の文化”**があったように思います。
✅ 徐々に変わる利用者像──「やってもらって当然」へ
時代が進み、利用者の中心は高度経済成長期を生き抜いた世代へと移ってきました。
日本を支え、モノが豊かになる時代を築いた方々です。
当然、価値観も違ってきます。
「権利」と「サービス」の境界が曖昧になり、
中にはこちらの言葉に耳を傾けず、暴言や拒否、暴力的な態度を取る方も出てきました。
もちろん全員ではありません。
ですが、「やってもらって当然」「自分の思い通りにしてほしい」といった空気を感じる場面が、確実に増えてきています。
感謝の言葉が減り、葛藤を抱える職員が増えているのが現実です。
✅ 感謝の言葉、そして“芯のある強さ”が支えだった
僕にとって、感謝されることはやりがいの一部でした。
そして何より、**あの世代の方々に感じていた「芯のある強さ」**が、仕事のモチベーションになっていました。
ある利用者の方が、突然食事を取らなくなったことがありました。
僕たちは必死で考え、環境を変えたり、ご家族と相談したり、いろんなことを試しました。
でも結局、その方は何も食べることなく、静かに最期を迎えました。
ご家族がぽつりと、こう言いました。
「きっと、自分の中で線を引いたんだと思います」
その言葉に、ハッとしました。
自らの“死に方”を選ぶ強さが、その方にはあったのかもしれません。
もちろん、医学的な原因もあったのでしょう。
でも、僕には「生き抜いてきた人の潔さ」が見えたように感じました。
✅ これからの介護は、“多様性”への対応が求められる
時代は流れ、価値観は変わり、介護職として求められる力も変化しています。
これまでのように**「支える対象」だった利用者が、より“主張する存在”になりつつある**。
- サービスに対する要求
- 言葉の選び方への配慮
- 家族との関係性の複雑化
一人ひとり違う背景とニーズに、どう応えていくか?
これは、介護職としてこれから向き合っていくべき大きなテーマです。
✅ 感情のぶつかり合いは、「チーム」としての成長のチャンス
現場では、時に不満や衝突が生まれることもあります。
でも、どんなに状況が違っても、私たち介護職が持つべき“共通のゴール”はただひとつ。
それは――
「利用者の生活の質を高めること」
ネガティブな態度や発言がそのゴールとずれているように感じると、
「自分だけが頑張っているのか?」と疲弊することもあるかもしれません。
でも、そんなときこそ、チームでの対話や見直しをするチャンスです。
個々の“温度差”を理解し合い、同じ方向を向いていくこと。
それが、より良いケアをつくる一歩だと信じています。
✅ 最後に──“変化の中で、自分の軸を持ち続ける”
時代が変わり、利用者の姿もニーズも変わります。
でも、僕たち介護職にとって大切なものは、きっと変わらない。
- 目の前の人を「人として」尊重すること
- 感謝されなくても、やるべきことを淡々とやること
- そして、心のどこかで、誰かの支えになっていると信じること
そうやって、自分の中の**“芯のある強さ”**を持ち続けたいと思います。
これまでの利用者から教わった、その姿勢を胸に刻んで――。
コメント