はじめに:無意識に積もる「身体のストレス」
介護職の現場では、「人間関係」や「感情の揺れ」に注目が集まりがちです。
でも、実際に最初に体調を崩す原因になりやすいのは、日々の物理的・化学的ストレスではないでしょうか?
「なんとなく疲れる」
「帰っても身体が休まらない」
それ、環境や薬剤によるストレスかもしれません。
今回は、「物理的ストレッサー」と「化学的ストレッサー」を介護現場に即して解説します。
1. 物理的ストレッサー:知らず知らずの身体の悲鳴
◆ 例1:施設内の暑さ・寒さ
空調が効きすぎて冷えすぎる、空調が効かずに暑すぎる。暖房が弱くて寒い、効きすぎて暑い。場所による温度差が激しい。
利用者さんに合わせた環境が、職員にとっては大きなストレスになっているケースも。
◆ 例2:移乗介助・体位交換による腰痛
特に人手不足の現場では、ボディメカニクスが徹底できなかったり、福祉用具の導入が進んでいなかったり、時間がないからとマンパワーに頼ってケアを続けており、腰への負担が蓄積されていきます。
◆ 例3:ナースコールや電話の“音”
日中・夜間、ひっきりなしのナースコールや電話対応。
ペースが乱され、集中力も低下します。また、生活音ではない不自然な騒音は、生活をしている利用者さんにとってもストレスです。特に認知症のある方にとっては不安や混乱を招く原因になると言えます。
◆ 例4:長時間の立ち仕事・深夜勤務
立ちっぱなし、歩きっぱなし、夜勤明けの疲労感。
休憩の取りづらさもストレスを悪化させます。
僕自身、1日の業務で2万7千歩を記録したこともあります。
2. 化学的ストレッサー:気づかないうちに肌や呼吸器が悲鳴
◆ 例1:消毒液による手荒れ・アレルギー
コロナ以降、消毒の機会が急増。
アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる手荒れ・皮膚炎が深刻という声も増えました。
◆ 例2:マスクや空気清浄剤による刺激
常時マスク生活での息苦しさ。
空間除菌スプレーや芳香剤による呼吸器への刺激や違和感。
◆ 例3:洗剤や薬品での皮膚トラブル
清掃・洗濯用の強い洗剤での肌荒れ。
誤って吸い込んでしまうことでの頭痛や吐き気なども軽視できません。
◆ 例4:必需品、使い捨てグローブでの皮膚トラブル
一概にグローブといっても、素材やパウダーの有無など様々な種類があります。人によって合う合わないがあり、個人で使い捨てグローブを購入しているという声もあります。
実際の声:「なんとなく疲れる」の正体
「手荒れがひどくて絆創膏だらけ。入浴や排泄介助のとき、染みてつらい」
「ずっと耳の奥でナースコールの音が鳴ってる気がする」
「暑すぎて汗だく。着替えもできず、体力が奪われていく感じがする」
こうした声は、「慣れ」で済ませてしまいがちですが、れっきとした“ストレッサー”によるダメージです。
対策は「改善提案」+「セルフケア」
✅ 設備の調整(空調、照明など)を現場から声に出す
✅ ケア時の姿勢見直し・福祉用具の活用
✅ 肌に優しい消毒液や、ハンドケアの備品を充実させる提案
✅ 音量調整や、夜間のナースコール配慮のマニュアル化
✅ マスクや手袋の素材変更や選択肢の提供
おわりに:無理しすぎない、自分の身体に気づくこと
介護の仕事は「利用者さんのために」が基本です。
でも、「自分の心身を無視していい」理由にはなりません。
「なんとなく疲れた」は、無視してはいけないサイン。
職場に伝える勇気、自分で守る工夫、どちらも大切です。
次回予告:目に見えない“感染”と“人間関係”がストレスになるとき
次回は、「生物的ストレッサー」「心理・社会的ストレッサー」をテーマに、
感染リスク・パワハラ・人間関係・プレッシャーなど、
介護職の心を蝕むストレス構造について。
記事はこちら
👉【第3回】“心にくる”ストレス──介護職が抱える見えない負担と向き合う
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