介護現場では「とにかく毎日を回すこと」が優先され、効率や仕組みづくりは後回しにされがちです。しかし、業務が属人化したり、必要以上の作業が積み重なったりすると、職員の負担が増えるだけでなく、利用者にとっても不公平や不安定なケアにつながります。
ここでは、介護現場における「業務プロセスの見直し」がなぜ必要なのか、そして実際にどのような工夫ができるのかを考えていきます。
✅「必要な介助」と「過剰なサービス」を仕分ける
介護の仕事は「やってあげたい」という思いから、つい過剰になりがちです。例えば、本人が自分でできることまで手を貸してしまったり、家族からの要望に応え続けたりすると、いつの間にか現場全体が疲弊してしまいます。
大切なのは「利用者の自立支援」と「職員の持続可能性」の両立です。基準を明確にして、「どこまで支援するか」をチームで統一しておくことで、過剰サービスを防ぎ、利用者にとっても職員にとっても健全な環境を保てます。
✅ルーチンワークの標準化とマニュアル化
介護現場には毎日必ず発生するルーチン業務(排泄介助・食事介助・口腔ケア・記録など)が数多く存在します。これらが属人化していると「Aさんに頼むとこう、Bさんだと違う」といったバラつきが生まれ、混乱や不満の原因になります。
標準化やマニュアル化を進めることで、誰が担当しても一定の質を担保できるようになります。また、新人教育の時間短縮や、引き継ぎの円滑化にもつながり、長期的に見れば現場全体の生産性を底上げします。
✅会議・情報共有の見直し
会議や申し送りは大切ですが、気を抜くと「会議のための会議」になりがちです。だらだらと時間をかけるよりも、「目的を明確にし、短時間で必要な情報を共有する」ことが重要です。
例えば、情報共有は電子化で記録を残し、会議は本当に必要なテーマに絞る。さらに「現場で動く人の時間を奪わない」仕組みに変えることで、業務時間を利用者のケアに充てられるようになります。
✅見直しの視点は「職員の時間=利用者の安心」
業務プロセスの見直しを進める際に忘れてはいけないのは、「効率化=利用者のため」だという視点です。
無駄を省いて確保できた時間は、雑務や記録ではなく「利用者と向き合う時間」に充てることができます。その積み重ねが、利用者の安心感や満足度につながります。単なる作業削減ではなく、「大切な時間をどう確保するか」という発想で取り組むことが求められます。
✅具体的な取り組みの例
・入浴や排泄の時間をあらかじめ計画し、無駄な待機や巡回を減らす
・食事介助の方法をチームで統一し、混乱や時間ロスを防ぐ
・申し送りの内容を「観察事実」と「対応策」に絞り、余計な推測や雑談を減らす
・業務フローを可視化し、「誰がどこで止まっているのか」を把握できるようにする
✅まとめ:業務プロセスの見直しは「現場の質」を上げる第一歩
介護現場の生産性を高めるうえで、業務プロセスの見直しは最も実践的で効果が出やすい取り組みです。
・過剰サービスを防ぐ
・ルーチンを標準化する
・情報共有を効率化する
こうした改善は、職員の負担を減らすだけでなく、利用者にとっても安定したケアを受けられる安心につながります。
今回のシリーズでは、介護現場における”生産性向上”について考えています。
【第1回】介護現場における「生産性」とは何か
【第2回】ICT・テクノロジーの活用で介護現場を変える
【第3回】介護現場における「業務プロセスの見直し」
【第4回】職員のスキルアップと役割分担
【第5回】働きやすさとチームワークの強化
【第6回】地域・外部資源の活用
【第7回】介護現場の生産性向上がもたらす成果
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