最期の姿は日々のケアの通信簿
特養で長く働く中で、私は何人もの強い拘縮のある利用者さんを見てきました。
介護現場でできることは「これ以上悪くならないように」という対応が中心になります。
しかし、拘縮のある方のケア(排泄・更衣・入浴など)は、どうしても時間も労力もかかる。
時間がかかること自体が悪いわけではありませんが、そこには「もっと早い段階で関われたら」というもどかしさが常にあります。
私が「看取り研修」を受けた際、講師の先生がこう話されました。
「最期の姿は、日々のケアの通信簿です。」
この言葉は今でも強く心に残っています。
褥瘡もそう。拘縮もそう。
棺に入らないほど強い拘縮のある方は、最期に無理に身体を動かし、整えなければなりません。
この期に及んでまだ痛い思いをするのかと…辛くなります。
拘縮は「防げるもの」と「防げないもの」がある
脳血管疾患などによって起こる拘縮は、医療的な要因が大きく、完全に防ぐことは難しい場合もあります。
一方で、廃用性からくる拘縮は、日々の関わり方で進行を遅らせる、あるいは防ぐことができる拘縮です。
「動かす時間がない」「安全のために動かさない方がいい」
そうした判断が続けば、筋肉は縮こまり、関節は固まり、やがて生活動作の幅が狭まります。
動かす機会を奪うことが、結果的に拘縮を進めてしまいます。
拘縮を防ぐために ― “日々の関わり”を変える
拘縮を防ぐために特別なリハビリ器具が必要なわけではありません。
日常の中で、「少しでも動かす」「自分でできることを続ける」という関わりを積み重ねることが大切です。
たとえば、
- ベッド上でのポジショニングを工夫する
- 体位変換時に関節を軽く動かす
- トイレ誘導や食事介助の中で、できる動作を促す
こうした小さな積み重ねが、関節の可動域を守り、生活の質を守ることにつながります。
介護職の私たちは、リハビリ専門職のような訓練を行うわけではありません。
しかし、「その人の“動ける力”を見逃さない目」を持つことはできます。
できる動きを尊重し、それを引き出す声かけや支援こそ、介護職ができる拘縮予防の一歩です。
「これ以上悪くならないように」から「今よりよくなるように」へ
介護現場では、「もう拘縮が進んでいるから仕方ない」と感じることも少なくありません。
でも、完全に元に戻らなくても、「今より楽に動ける」「痛みが減る」だけで、その人の生活は大きく変わります。
大切なのは、“もう遅い”ではなく、“今からでも”という視点。
そして、「拘縮を防ぐ」という意識を、介護の現場全体で共有することです。
拘縮予防は、介護予防の延長線上にある
僕が地域の介護予防教室に関わる上で、現場でのこの経験も伝えています。
元気なうちから身体を動かす習慣をつけること。
それがやがて、施設に入った後の身体状態にもつながる。
フレイル予防は、介護予防であり、将来の拘縮予防でもある。
だからこそ、介護職は「介護をする人」だけでなく、「予防に関わる人」でもあってほしいと思っています。
介護と予防の間に線を引かず、横のつながりを持って、包括的に関わっていく。
それが、利用者さんの尊厳を守ることにつながると感じています。
おわりに:日々のケアの通信簿を、誇れるものに
拘縮を完全に防ぐことは難しい。
でも、日々の関わりの中で、
- 少しでも動かす
- 声をかける
- 諦めずに“今できること”を見つける
その積み重ねが、最期に「誇れる通信簿」として形になる。
それが、私が介護現場で学んだ、拘縮と向き合う意味です。
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