埼玉老人ホーム殺人事件から考える、介護施設の安全と未来

はじめに:信頼を揺るがす事件

2025年10月15日未明、埼玉県鶴ヶ島市の介護付き有料老人ホーム「若葉ナーシングホーム」で、2人の高齢女性が命を奪われる痛ましい事件が起きました。容疑者は施設の元職員。
このニュースは、介護に携わる私たちにとっても、家族を預ける方々にとっても、大きな衝撃でした。

今回は事件の概要を振り返りながら、介護施設の安全体制、職員の働く環境、そして信頼を取り戻すために私たちができることを考えていきます。


事件の概要:何が起きたのか

事件が起きたのは、埼玉県鶴ヶ島市の介護付き有料老人ホーム「若葉ナーシングホーム」。
10月15日未明、89歳の小林登志子さんと上井アキ子さんが、ベッド上で頭部から血を流して倒れているのが発見されました。司法解剖の結果、死因はいずれも首を絞められたことによる窒息死とされています。

防犯カメラには、午前2時頃、ナイフを持った男の姿。
その男は、施設の元職員である木村斗哉容疑者(22歳)でした。

木村容疑者は2024年7月まで同施設に勤務しており、退職後も暗証番号を知っていたため、電子ロックを解除して侵入したとみられています。逮捕時には「刃物で刺して殺した」と供述していますが、刺し傷はなく、動機も曖昧です。

この事件は、介護施設のセキュリティの脆弱さ元職員情報の管理不足という課題を浮き彫りにしました。


事件の背景:介護現場が抱える構造的な問題

この事件を、単なる「元職員の犯行」として終わらせてはいけません。
その背景には、介護業界が長年抱えてきた構造的な問題があります。
ここでは、特に重要な3つの視点から整理します。


1. セキュリティの甘さ

退職後も暗証番号を使って施設に侵入できたという事実は、セキュリティ管理の重大な欠陥です。
厚生労働省のガイドラインでは、防犯カメラ設置や施錠管理の徹底が求められていますが、現場では人手不足や予算の制約から後回しになりがちだと考えられます。

特に中小規模の施設では、最新のシステムを導入する余裕がないケースや、
暗証番号が長期間そのままになっている施設もあるのではないでしょうか。

今回の事件を機に、暗証番号の定期更新や退職者情報の管理徹底は、すべての施設で見直す必要があると考えます。


2. 職員の労働環境

容疑者が「元職員」だったことも、業界として無視できません。
介護職の離職率は依然として高く、厚労省の調査(2023年)では約15%。医療・福祉分野の中でも高水準です。

原因としては、

  • 長時間労働
  • 賃金の低さ
  • 精神的なストレス
    などがあげられます。

SNSでも、「報われない」「限界」という声も見かけます。
メンタル不調に陥る人も少なくありません。

職員の処遇改善と、メンタルケアの体制づくりと同時に、職員を守る為のルールや体制づくりが急がれると考えます。


3. 家族と社会の信頼低下

介護施設は、入居者にとって「生活の場」であり、家族にとっては「安心を託す場所」です。
その信頼が揺らぐと、「施設に預けるのが怖い」と感じる人が増え、在宅介護の負担が再び家庭にのしかかります。

地域の方々も不安を口にしているようです。
介護施設の信頼回復は、現場だけでなく地域社会全体の課題です。


安全な介護現場をつくるために:3つの提案

悲劇を繰り返さないために、私たちができることを具体的に考えてみましょう。


1. セキュリティ対策の見直し

  • 暗証番号の定期更新
  • 生体認証(顔認証・指紋認証)の導入
  • 退職者データのアクセス権削除

こうした基本的な対策の徹底に尽きるのが現状でしょうか。

補助金や支援制度の活用も有効です。


2. 職員の処遇とメンタル支援

厚労省の「処遇改善加算」を活用し、給与面・休暇制度の改善を。
また、湘南国際アカデミーの調査(2024年)では、介護職員の約7割が「正当な評価を求めている」と回答しています。

キャリアパス制度や、職場内の相談窓口を整えることで、離職率を下げることに繋がります。「働きがい」がある環境こそ、利用者さんの安心にもつながります。

また、利用者からの暴力・暴言、過度な要求やカスタマーハラスメントから職員を守る仕組みやルールづくりも重要だと考えられます。

※職員を守る仕組みやルールづくりについての記事は下記をクリック👇
【第7回】職員を守るための具体的な仕組みづくり – 介護福祉士の「みやブログ」


3. 家族と地域の関与

家族が施設を見学するときは、

  • 防犯カメラの数
  • 出入口の施錠方式
  • 職員の教育体制

といった項目をチェックリスト化して確認しておくと安心です。

実際に見学することは難しい場合が多いと思いますが、聞いて確認するだけでも判断材料のひとつになるでしょう。

また、地域で行われる介護セミナーや説明会、イベントに参加し、
「地域で支える介護」の意識を広げることも大切です。


まとめ:安心できる介護の未来へ

今回の事件で、2人の尊い命が奪われました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

私たちは、悲しみを繰り返さないために行動しなければなりません。
セキュリティの見直し、職員の働く環境の改善、家族や地域との連携。

どれも、介護を「安心して任せられる場所」に戻すために欠かせない要素です。


おわりに:一緒に声を上げよう

この事件を風化させないために、今できるアクションを起こしましょう。

  • 施設のチェックポイント
     防犯カメラの有無、施錠管理の方法、職員教育体制を確認しましょう。
  • 情報収集の継続
     厚生労働省の介護施設ガイドラインや、NHKなど公的機関の報道を定期的にチェック。
  • SNSや仲間との会話で話題に

私たち一人ひとりの意識が、介護の未来を変える力になると信じています。
安全で信頼できる介護を、共に築いていきましょう。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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この記事を書いた人

介護福祉士「miya」
福祉の授業がきっかけで介護の道へ
気づいたら18年
経験:特養・養護・通所・訪問
現在:特養
趣味:釣り、ウイスキー、コーヒー、園芸、アウトドア、ファッション

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