〜「僕のいる場所には来ないでください」〜
介護予防の教室に関わって3年になります。
その際に挨拶でいつも伝えていることがあります。
「僕は普段、介護の仕事をしています。
なので、皆さんは僕のいる場所に来ないでください!」
すると、会場は和み、笑い声が広がります。
その後、少し真面目なトーンで続けます。
「僕のところに来るというのは、何かしらの理由があるということ。
それは、必ずしも望まれるものではありません。
なので、皆さんは、いつまでも元気でいてください。」
笑いのあとに生まれる“静けさ”と“うなずき”。
この空気の変化に、いつも介護士としての使命を感じます。
✅ 介護予防は「まだ元気な人」のための支援
介護と聞くと、「支える」「手伝う」「介助する」というイメージが強いかと思います。
介護予防は、その前の段階です。
「支援される前に、自分でできることを続けるためのサポート」。
これが介護予防の本質だと感じています。
介護職がこの領域に関わることで、
“要介護になる前”の人たちと関われるようになる。
つまり「介護の最前線」から「予防の最前線」へと、関わりの幅が広がります。
✅ 平均寿命と健康寿命の差が伝えること
私はよく、教室の中で平均寿命と健康寿命の話をします。
日本人の平均寿命と健康寿命には、男女ともに約10年の差があります。
この“10年”という時間は、何かしらの不自由がある期間を意味しています。
つまり、長生きだけではなく「元気で生きる期間」を延ばすことが大切。
これが介護予防の目的であり、私たちが関わる意味でもあります。
✅ フレイル予防の3本柱
介護予防を考えるうえで欠かせないのがフレイル予防です。
フレイルとは、健康と要介護の間にある中間的な状態のこと。
その予防には「栄養・運動・社会参加」の3つが重要だとされています。
教室では、こんなふうに伝えています。
「バランスよく食べて、その後は口の中を清潔に。
教室が終わったら、家でも運動の意識を。
そして何より、今日みたいに外に出て、人と関わってたくさん笑ってください。」
介護の現場では「動けなくなってから」関わることが多いですが、
介護予防では「動けるうちに」関わることができる。
この違いはとても大きいと感じます。
✅ 介護士だからこそ伝えられる言葉
私は最後に、こう締めくくります。
「最初に言いましたが、皆さんは僕のところに来ないでください。
僕が皆さんのところに来ますので。
ただ、もし何かお手伝いが必要になっても、その時は僕らがいるので安心してください。」
笑いながらも、「そうだよね」「大事だよね」とうなずく方が多く、
その反応を見るたびに、介護士として伝える意味を実感します。
私たち介護職は、日々の現場で“介護が必要になった後”を見ています。
だからこそ、「そうならないために何ができるか」を伝えられる立場にあります。
それは、医療職でも行政でもなく、“介護士だからこそ”できること。
✅ 介護予防に関わることの本当の意味
介護予防に関わることは、
「介護が必要になる前の人たちと関わる」という新しい役割を持つこと。
現場で「もっと早く関われていれば」と感じた経験を、
これからの支援に活かすチャンスでもあります。
介護予防は“誰かの未来の介護”を減らすことにつながります。
それは同時に、私たち介護士自身の負担を減らすことにもなる。
つまり、介護予防に関わるということは――
「未来の介護者を守ること」であり、「介護職を守ること」でもあると思っています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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