第3回:家族介護で考える尊厳

※本記事は「尊厳シリーズ」第3回です。
前回の記事はこちら → 第2回:施設での尊厳の実践(現場事例)


✅家族だからこそ難しい「尊厳を守る介護」

家族介護の現場では、「その人らしさを大切にしたい」という思いと同時に、
「現実的にそんな余裕はない」という葛藤を抱えることが少なくありません。

施設では職員がチームで支え合えますが、在宅介護では多くの場合、
家族の一人が中心となり、24時間・365日、生活全体を支えています。

そのため、介護が「相手のため」から「自分がやらなければ」に変わる瞬間が生まれ、
気づかないうちに“尊厳を支える介護”が“義務としての介護”にすり替わってしまうこともあります。


✅「できること」を奪わない勇気

介護を続けていると、「私がやったほうが早い」と思うことがあると思います。
しかし、本人の「自分でやってみたい」「少しでも動きたい」という気持ちを尊重することことが、尊厳を守るうえで最も大切な視点です。

たとえば、
・服を選ぶ
・お茶を注ぐ
・食器を片づける
・好きなテレビ番組を自分で決める
これらは一見小さなことですが、**「自分の生活を自分で選ぶ自由」**を意味します。

家族がその機会を奪わず、見守る勇気や気持ちを持てるか。
それが、介護の中で尊厳を守る最初の一歩です。


✅尊厳を守ることは「介護する側」を守ることでもある

在宅介護を続けるうちに、介護者が心身ともに疲弊してしまうことがあります。
「自分ばかりが頑張っている」「もう限界かもしれない」
そんな思いが強くなるほど、相手の言動に過敏になり、関係がすれ違うこともあります。

しかし、尊厳を守るということは、介護する側の尊厳も守ること
完璧を目指さず、「今日はここまでできた」と受け止めることが、
介護を続ける力を取り戻すための大切な視点です。

また、介護サービスを利用することは「甘え」ではありません。
訪問介護・デイサービス・ショートステイなど、専門職に頼ることで、
家族がリフレッシュし、ご家族様もより安心できる時間を過ごせます。
それもまた、“尊厳を支える選択”のひとつです。


✅家族の「想い」を言葉にする

介護が長くなるほど、家族間でも「意見の違い」や「介護の負担差」が出てきます。
その中で重要なのは、「自分の想い」を言葉にすることです。

たとえば、
「本人の希望をどう尊重するか」
「どこまで自宅で介護を続けるか」
「どんな最期を迎えてほしいか」
これらを話し合うことは、時に重く感じるかもしれません。
しかし、避けて通ると後悔や葛藤を残すことになります。

尊厳を守る介護は、家族の“想いの共有”から始まる。
話すこと、聴くこと、その積み重ねが介護の質を高めていきます。


✅「苦しくなる前に、介護士に頼ってほしい」

私がこれまで、在宅介護を経験したご家族の言葉の一部です。
「もっと早く相談すればよかった」「一人で抱えすぎた」――
こうした言葉には、介護の尊厳と同時に“家族自身の尊厳”が詰まっています。

介護職は、単に介助を行うだけでなく、
家族が尊厳を持って介護を続けられるよう支える存在でもあります。
苦しいと感じた時こそ、専門職に頼ってください。
それが、家族の尊厳を守る第一歩です。


✅おわりに:尊厳は「関係性」で守られる

尊厳を守るということは、特別なことではありません。
介護を通じて生まれる関係の中で、お互いを尊重すること
その積み重ねが、家族にも利用者にも優しい介護を育てていくと思います。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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この記事を書いた人

介護福祉士「miya」
福祉の授業がきっかけで介護の道へ
気づいたら18年
経験:特養・養護・通所・訪問
現在:特養
趣味:釣り、ウイスキー、コーヒー、園芸、アウトドア、ファッション

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