現場の声が届くために
前回の記事は、現場からのボトムアップがテーマでした。
しかし、現場だけが頑張ってもうまくものではないと思っています。
現場に力があっても、仕組みが整っていなければ声は埋もれてしまう。
逆に、どんなに素晴らしい仕組みがあっても、現場が停滞していたら動きません。
だからこそ、
“現場の声が自然と上がり、自然と活かされる組織”
をつくるために、マクロ側が整えておくべき土台があると感じます。
今回はその土台について、僕なりにまとめてみました。
現場の声を「歓迎する空気」をつくる
ボトムアップが難しい職場には、共通してこんな空気があるのではないでしょうか。
- 「言ってもどうせ変わらない」
- 「余計なことを言わない方がいい」
- 「上の顔色を見てしまう」
こうした空気は、制度や会議だけでは変わりません。
まず必要なのは、“声を上げていいんだ”という雰囲気づくりです。
そのために、組織側ができることは——
- 提案に対して、まず理解を示す
- すぐに採用できない時も、理由を丁寧に説明する
- 否定ではなく「どうすれば実現できるか」を一緒に考える
- 威圧的な態度で聞かない
こうした積み重ねが、現場の人たちの「話してみようかな」という気持ちを育てます。
意見を吸い上げる“仕組み”を用意する
どれだけ現場に想いがあっても、
声を上げるルートが存在しないと、声を届けることは困難です。
たとえば、こんな仕組みがあると良いと思っています。
- 小さな話題でも気軽に出せる定例ミーティング
- 匿名で意見や提案を出せるフォーム
- ユニット・フロアごとの改善提案書
- 中堅・リーダー層が意見をまとめて経営層に届けるルート
“取り入れるかどうか”以前に、
意見を受け止める“窓口”があることが大事だと思います。
現場からの思いは、通り道が整って初めて力になります。
「小さな改善でも評価される文化」をつくる
ボトムアップを止めてしまう要因は、
“がんばっても無駄””どうせ評価されない”という虚無感があります。
逆に、ほんの小さな改善でも認められて評価される職場は、自然と動き始めます。
組織側ができることは、たとえば——
- 小さな工夫や改善を定例で紹介する
- 成果より「取り組んだ姿勢」を評価する
- 感謝や称賛を口にする文化を育てる
- 失敗しても責めない(むしろ学びとして扱う)
「動くと褒められる組織」は、勝手に良くなっていくものだと思います。
それだけで職員の心理的安全性は大きく変わります。
中堅・リーダー層を“仲介者”として育てる
ボトムアップは、現場と経営がダイレクトにつながるわけではありません。
小さな組織ならダイレクトにつながり、風通しもいい場合が多いでしょう。
しかし、規模が大きくなってくると、間にいる中堅職員やリーダー層が、
**重要な“仲介者”**になります。
仲介者が持つ役割は、
- 現場の言葉を、経営側に伝わる形へ整理する
- 経営の意図を、現場にもわかる言葉に置き換える
- 双方がズレないよう、間をつなぐ
こうした“橋渡し”がうまく機能している組織は、
スムーズに改善が回り始めます。
組織側は、
中堅・リーダー層が疲弊せず、動きやすくなる環境や研修を整えることが必要です。
人間関係で左右されない、人事・評価の透明性
ボトムアップは “好き嫌いが影響する組織”では絶対に育ちません。
現場の人たちは敏感です。
不公平を感じた瞬間に、声を出す気持ちは消えてしまいます。
だからこそ、組織としては——
- なぜその人がリーダーなのか
- どのような基準で評価しているのか
- どんな行動が認められるのか
これをできる限り透明化し、
人ではなく“行動と実績”で判断する仕組みが必要です。
公平性は、ボトムアップの土台そのものです。
組織側が「動く」ことで、現場は安心して声を出せる
ボトムアップを成功させるために、
組織にとって一番大切なこと。
「声を受け取って終わりにしない」こと。
完璧な対応でなくてもいいです。
小さくても、部分的でもいい。
- 何かひとつ改善してみる
- 新しい仕組みを試してみる
- 動いたプロセスを現場に共有する
この「動いた」という事実があるだけで、
現場の人たちは「また意見を言ってみよう」と思うはずです。
ボトムアップは、
現場だけでなく、組織側も動き続ける姿勢があって初めて成立します。
現場(ミクロ)と組織(マクロ)が、同じ“未来”を見て進める組織へ
現場から声が自然と上がる。
組織がその声を自然と活かす。
そのサイクルが回り始めたとき、
組織は成長していくと思います。
そして何より、そこで働く職員が安心して働けるようになる。
その安心が、利用者さんにも必ず伝わっていきます。
僕は、そんな“強くて優しい組織”が増えればいいなと思っています。
そして今の法人でも、少しずつでもその流れが生まれたらうれしい。
ミクロとマクロ——
どちらが先ではなく、どちらも必要な大切。
これからも、自分の現場でできることをしながら、
組織の風向きが少しでも良い方へ動いていくことを願っています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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