介護の現場、とくに特別養護老人ホームでは、個室化やユニットケアが当たり前になってきました。
利用者さん一人ひとりの生活を尊重し、プライバシーを守り、個別性の高いケアを行う。
この流れ自体は、時代として当然だと思いますし、僕自身も否定するつもりはありません。
それでも最近、介護施設での高齢者虐待のニュースを目にするたびに、どうしても拭えない違和感があります。
環境は良くなっているはずなのに、なぜ問題は減らないのか。
もしかすると、ここには「良かれと思って進めてきた変化」が生んだ、別の側面があるのではないか。
そんなことを考えるようになりました。
集団ケアの時代にあった「人の目」
昔の施設は、集団ケアが主流だったと思います。
病院モデルに近く、利用者さんは同じ空間で過ごし、職員も複数人で一斉に動く。
個別性という視点は、今より多くはなかったのではないでしょうか。
ただ一方で、そこには常に人の目がある環境がありました。
職員同士が互いの動きを見ている。
利用者さん同士の存在もある。
誰かが何かをすれば、自然と周囲に伝わる。
これは、結果的に抑止力として働いていた面もあったのではないか。
そう感じることがあります。
個室・ユニット化が生んだ「一人対応」の現実
現在主流となっているユニットケアでは、家庭的な雰囲気や個別性が重視されます。
その理念は理解できますし、利用者さんにとってもメリットは大きいと感じます。
僕自身も個別ケアは大いに賛成です。
しかし現実の運営を見ると、
配置基準ギリギリで回しているユニットでは、職員が一人きりになる時間が多い
という状況も珍しくありません。
排泄介助、移乗、入浴、拒否の強い対応。
本来なら複数人で行いたい場面でも、現実的には一人で対応せざるを得ない。
これは「個別ケア」というより、
一人に判断も感情も任せざるを得ない構造になっているように感じます。
プライバシーは、時に「密室」になる
個室であること自体が悪いわけではありません。
ただ、プライバシーが守られている環境は、見方を変えると人目につきにくい環境でもあります。
人は誰でも、疲れれば余裕を失います。
感情が揺れた瞬間を、完全にコントロールできる人ばかりではありません。
そんなとき、
・誰にも見られていない
・誰にも気づかれない
・助けを呼びにくい
この条件が重なると、リスクは確実に高まる。
それは個人の資質というより、
環境の問題も関係しているのではないでしょうか。
「質を上げる=回らなくなる」という矛盾
個別ケアの質を本気で高めようとすると、
どうしても時間と人手が必要になります。
でも現場では、
質を上げようとするほど業務が回らなくなる。
回らなくなるから、結局は個人が無理をする。
この構造の中で、
「尊厳を守れ」「虐待は許されない」と言われても、
現場は苦しくなる一方だと感じてしまいます。
問題は、個人ではなく構造なのではないか
虐待が起きると、どうしても
「その職員が悪かった」
「意識が低かった」
という話になってしまうかもしれません。
でも本当にそうでしょうか。
一人で抱え込まざるを得ない状況、
一人で判断せざるを得ない環境、
一人で感情を処理せざるを得ない働き方。
この状態を放置したまま、
個人の善意や資質に頼り続けること自体に、限界が来ているのではないか。
僕は、そんなふうに感じています。
第2回では、
「じゃあ現場で最低限できることは何か」
そして
「個人に頼りすぎないために、制度として何が必要なのか」
について、もう一歩踏み込んで考えてみたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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