介護職として働いていると、利用者さんのご家族からよくこう言われます。
「本当は、できるだけ自分で看たいと思っているんですけど…」と。
その言葉に、利用者さんの気持ちは勿論それが嬉しいだろうと思いつつ、 僕はいつも複雑な気持ちになります。
なぜなら──
利用者の多くの方は「家にいたい」と言う。 施設で働いていても、認知症の方は毎日「家に帰る」と言う。
しかし、介護は、家族だからこそ「できないこと」もあると思うからです。
✅ 僕自身、祖父の介護で何もできなかった
これは僕の実体験です。
介護職として働いていたある日、大好きで尊敬する祖父が介護が必要になりました。
現場では何気なく行っているオムツ交換──
それが、祖父を目の前にして手が動かなくなったんです。
「大好きで、尊敬していたおじいちゃんに、自分が…?」
色々な感情があふれて、何もできませんでした。
今思い返しても、後悔があります。
もっとできることがあったんじゃないか。
でも、あのときの自分には無理だった。
それくらい、“家族を介護する”というのは心に重いことなのだと痛感しました。
✅ 「覚悟」の違いが、できる・できないを分ける
そのとき、一緒に暮らしていた祖母は、当たり前のように介護をしていました。
祖母と僕を分けたのは、“覚悟”だったのかもしれません。
いくら介護のプロでも、家族に向き合うときは別物です。
逆に言えば、覚悟を持って日々向き合っているご家族は本当にすごい。
でも、全員がその覚悟を持てるとは限らない。
持てないからといって、責められるものでもありません。
✅ 家族介護で苦しむ前に、専門職を頼ってほしい
介護に疲れて、
大切だった人にマイナスな感情を持ってしまいそうになる。
- 相手が悪いわけじゃない
- 自分が弱いわけじゃない
それだけ、在宅介護は過酷だということです。
だからこそ、僕は声を大にして言いたい。
「苦しくなる前に、僕たちに頼ってほしい」と。
✅ 「みたい・みるべき」という思いも、否定はしない
家族だからこそ、
「最後まで自分で介護したい」
「他人には任せたくない」
そう思うのは当然のことです。
その気持ちは決して間違いではありません。
でも──介護は本当に大変です。
特に認知症介護は、精神的にも肉体的にも、想像以上の負担がかかります。
✅ 最期の時間を「良かった」と思えるように
介護者が疲れて、相手を責めてしまう。
ニュースで見る痛ましい事件も、気持ちがわかってしまう自分もいます…
だからこそ、任せてほしい。
大好きで大切な人だからこそ、
その人を「嫌いになる前に」──
僕たち専門職に“協力”させてほしい。
次回、第2回は在宅介護に限界を感じたときにどうすればいいかについて、
さらに具体的に掘り下げていきます。
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