【第2回】利用者像の変化と“芯の強さ”へのリスペクト

✅ 利用者の「芯の強さ」が僕たちを支えていた

僕が介護職を始めた頃、今よりも多くの利用者に共通して感じていたことがあります。
それは、**「覚悟のある人の強さ」**でした。

中でも忘れられないのが、自ら食事を絶ち、静かに最期を迎えた方々の姿です。
突然、食べることをやめる。
それは私たち職員にとって、どうしても受け入れがたい状況です。

  • 何なら食べられるだろう?
  • 家族と連携して、環境を変えてみよう
  • 栄養補助の方法は?言葉がけは?

できる限りの工夫と関わりを重ねても、やがてその方は、何も口にしないまま息を引き取られました。


✅ 「自分の中で線を引いたんだと思います」

その方のご家族が、最期のときにこんな言葉を口にしました。

「きっと、自分の中で線を引いたんだと思います」

その瞬間、僕の中で何かが腑に落ちた気がしました。
**「ああ、この人は、自分の生き方を自分で選んだのかもしれない」**と。

もちろん医学的には、疾患や加齢に伴う影響だったのかもしれません。
でも、僕の目にはその方の中に**“命の締め方”を決める強さ**があったように感じたのです。


✅ 男性介護職としての「戸惑い」と「尊敬」

介護の仕事を始めた当初、僕は男性であることに少なからず遠慮を感じていました。
身体介助や排泄ケアの場面で、「本当に自分がやっていいのか?」と迷うことも多かった。
でも、多くの利用者がそんな僕を受け入れてくれました。

  • 「男の人に申し訳ないけど、助かるよ」
  • 「昔は男の人がこんなことしなかったもんね」
  • 「でもあなたは優しいから、安心して任せられるよ」

そう言ってくれる方々の言葉が、どれだけ心の支えになったことか。
**「人として受け入れてもらえたこと」**が、僕の自信と誇りになりました。


✅ 「やりがい」とは、感謝されることだけじゃない

もちろん、感謝の言葉は大きなモチベーションになります。
でも僕がやりがいを感じていたのは、感謝の言葉の奥にある“その人の人生”への敬意です。

戦中・戦後を生き抜き、苦労を重ねてきた方々。
誰かのために、家庭や社会のために自分を犠牲にしてきた世代。

  • 小さなことに「ありがとう」と言える
  • ケアを受けながらも「自分が頑張らなきゃ」と思っている
  • 自分の最期を、自分で決めようとする

こうした姿に、僕はずっと**「人としての尊敬」**を抱いてきました。


✅ 時代が変わっても、尊敬される存在でありたい

今、現場の空気は変わってきています。
介護職への要求は高まり、「やってくれて当然」「もっとこうしてほしい」という声も増えてきました。

それでも僕は、忘れたくないのです。
**これまでの利用者が見せてくれた「芯の強さ」**を。
そして、それを支える介護職が尊敬される存在であり続けたいという思いを。

利用者の世代が移り変わる中で、私たちが伝えていくべきものもある。
たとえ目の前の言葉が厳しいものであっても、
その奥にある背景や人生を汲み取ろうとする姿勢を、これからも忘れずにいたいのです。


✅ 最後に:介護は「命に触れる仕事」

介護職は、ただのサービス業ではありません。
それは、**“命と向き合い、人生の最後に寄り添う仕事”**です。

感謝されるかどうかだけでなく、
やりやすさや評価だけでもなく、
その人の生き様と最期を受け止める覚悟が必要な仕事です。

そして、それを教えてくれたのは、今まで出会ってきた利用者の方々でした。
感謝と尊敬を込めて、これからもこの仕事を続けていきたい。
時代が変わっても、「介護って、いい仕事だよね」と言ってもらえるように。

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この記事を書いた人

介護福祉士「みや」
高校時代、福祉の授業がきっかけで介護の道へ。
短大卒業後、社会福祉法人へ入社し14年経験を積む。
転職サイトを通して初めての転職。
別の社会福祉法人で現在4年目。
既婚、息子が2人。
現場と人財、介護の未来を考えるブログを運営中。
趣味:ウイスキー、コーヒー、釣り、園芸、アウトドア。

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