前回の記事では、介護福祉士の地位向上には「職能団体」の存在が欠かせないこと、そして、その一方で組織率が低く課題も多いことをお伝えしました。
では、どうすればもっと多くの介護福祉士が職能団体に関心を持ち、参加するようになるのか?
今回は、**現場目線で考える「介護福祉士会のこれからの在り方」**について、いくつか具体的な提案を交えてお話します。
ただの“お勉強会”じゃない。「使える」会にしよう
介護福祉士会=研修会、というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
もちろん、知識のアップデートやネットワークづくりは大切ですが、
日々の業務に「今すぐ役立つ」情報やサポートがあれば、参加のハードルはグッと下がります。
✅ たとえば、こんな実務サポートはどうでしょう?
- 記録文例やアセスメント例のテンプレート配布
👉 実務で迷いやすい記録や計画書づくりを効率化 - 困難事例の相談・共有コーナー
👉 「このケースどう対応した?」を全国で共有 - 優良事業所の認証制度と公表
👉 働きやすさを“見える化”して職場選びの参考に
いずれも、「現場での負担軽減」や「実感できるメリット」につながるものです。
キャリアアップ支援=転職支援ではない。でも、可能性はある。
特に注目したいのが、キャリアアップ支援の強化です。
介護職にとって「キャリア」とは、役職や収入だけではなく、
- 自分らしい働き方
- 新たなチャレンジ
- 認められる経験
といった広い意味での“成長”を含みます。
✅ 提案:職能団体によるキャリア支援の仕組み
- 推薦制度の整備
👉「この人なら信頼できる」と団体が太鼓判を押すことで、転職・異動時に信頼性が増す - 求人マッチングの非営利化
👉 転職サイトではなく、介護福祉士会が中立的に支援する - 転職紹介報酬を“法人の入会率”とリンク
👉「報酬0円」の代わりに、法人が職員の会費を一部補助する仕組みもありうる
これは少々“戦略的”な話になりますが、
民間の転職エージェントでは、職員1人紹介あたり約100万円(紹介者の年収による)もの成功報酬が動いています。
それに比べて、職能団体がノーリスクでサポートを提供し、
法人には「団体加入率」を条件に提示することで、Win-Winの仕組みが作れるかもしれません。
“関わった実感”がある活動を増やす
職能団体のもうひとつの課題は、「活動が見えにくいこと」です。
現場職員から見て、
「何をしてるのか分からない」
「誰が決めてるの?」
と感じてしまうと、どうしても距離感が生まれます。
✅ 提案:参加者の声が“確実に届く”仕組みを
- オンライン署名や意見募集に、フィードバックをつけて公開
👉 「あなたの意見が、政策提言に反映されました」と明確に伝える - ポイント制導入(参加・提案で貯まる)
👉 電子図書館の利用や研修費割引、ノベルティなどと交換 - “署名キャンペーンの成果報告”
👉 何件集まり、どこに提出し、どのように扱われたかを丁寧に報告
「声を出しただけで終わらない」ことがわかれば、
「また関わろう」と思える人も増えるはずです。
法人との連携がカギになるかもしれない
個人ベースの加入には限界があります。
だからこそ、法人全体での加入支援が重要になってくるでしょう。
✅ こんな制度設計はどうでしょう?
- 法人の「入会率50%以上」で優遇制度
👉 例えば、団体側が職員紹介の報酬を0円にする代わりに法人加入率UP - 法人名の公表(加入率・支援姿勢など)
👉 働きたい人に「信頼できる事業所」としてPRになる - 事業所単位での働きやすさ認証・表彰制度
👉 入会率の高さや改善提案の実績も評価対象にする
職能団体が、“現場と法人の橋渡し役”になることが、
結果的に業界全体の質や働きやすさの底上げにつながるはずです。
さいごに:地位向上は「制度」と「意識」両輪で
介護福祉士の地位向上は、
行政や政策だけに頼って実現するものではありません。
- 現場から声を上げること
- それを受け止め、社会へ届ける団体の力
- 団体の活動を支え、主体的に関わる個々の姿勢
この三つがそろって、初めて“変化”が生まれます。
介護福祉士会が変わることで、現場も変わる。
現場の声が届くことで、団体も変わる。
だからこそ、私たちが「こんな介護福祉士会があればいい」と声にすることは、
けっして他人任せではなく、未来への第一歩になるのではないでしょうか。
📌 次回(第3回・最終回)予告:
「現場から声を上げるには──“私たち”にできる小さなアクション」
入会だけが関わり方ではありません。
「現場でできるアクション」「仲間を巻き込む方法」「続けるコツ」など、
実践的なヒントをお届けします。
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