【導入】
介護の現場では、食事中に突然「トイレに行きたい」と言われることがあります。
一見ささいなことのようで、実はとても悩ましい問題。
僕自身、介護福祉士として働く中で何度もこの場面に直面してきました。
どちらも大切なニーズ──それでも「今、どちらを優先すべきか」で、心が揺れるのです。
僕が感じる葛藤
正直に言うと、食事介助を最後まで支援したいという気持ちが先に立ちます。
誤嚥のリスクや、他の人の食事を誤って口にしてしまう可能性──介護職として見過ごせない危険があります。
それに、途中で席を立たれること自体、自分がされたら嫌だなと感じます。
でも一方で、排泄は待てない生理現象であり、
もし間に合わず失禁してしまえば、利用者の自尊心を大きく傷つけてしまうかもしれない。
この矛盾した気持ちの間で、僕はいつも立ち止まってしまいます。
どちらも“命”と“尊厳”に関わるニーズ
食事は命をつなぐ行為であり、介助が必要な方には特に慎重な支援が求められます。
一方、排泄の自立やコントロールも、その人らしく生きるための重要な要素。
どちらも、軽くは扱えない。
だからこそ、僕はいつも「これはセンスが問われる場面だ」と感じています。
現場で判断に迷ったら──3つの視点を意識する
判断に迷ったときには、以下の3つの視点で考えるようにしています。
- ① 安全:誤嚥や転倒などのリスク、介助者の負担
- ② 尊厳:失禁や食事中断による心理的負担
- ③ 快適:利用者のペースや表情から感じ取れる状態
この3軸で状況を整理すると、冷静な判断がしやすくなります。
対応パターン別・僕の判断基準
- 食事介助が一人だけの場合 → トイレを優先する。食事は一時中断。
- トイレが急を要さない様子で、周囲も対応中の場合 → 一言説明し、数分だけ待ってもらう。
- 近くに別のスタッフがいれば → 「申し訳ないがトイレをお願いできますか?」と応援要請。
どれも、「一人で抱えない」ことが前提です。
判断に正解はない。だからこそ共有が大切
どれだけ考えても、「あのとき、あれでよかったのか」と後から悩むことはあります。
でもその判断が間違いだったかどうかは、自分だけで抱え込まず、チームで共有することで見えてくる。
- 判断の理由を伝える
- 失敗も含めて振り返る
- 他のスタッフの視点を知る
こうした積み重ねが、判断力を磨き、次の場面に活きてくると感じます。
答えが一つじゃない現場だからこそ“寄り添う判断”を
食事か、トイレか──どちらかを“機械的に優先する”のではなく、
目の前のその人、その瞬間の状況を見て「どうするか」を考える。
それが介護職に求められる“センス”であり、”専門性”だと思います。
【まとめ】
「正解」は、状況によって変わる。
でも、「どう判断したか」を自分で言葉にできるかどうかは、介護職としての大切な成長です。大切なのは、迷いながらでも“相手にとっての最善”を考え続ける姿勢。
チームで支え合いながら、そんな判断ができる職場でありたいものです。
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